妊活中、妊娠している方、授乳中の方で、新型コロナワクチンの接種を悩んでいる方へ ~その3~

stay healthy 予防医学

現時点での情報をまとめましたので、新型コロナワクチンの接種を悩まれている方への参考になれば幸いです。

現在のところ、当院では、妊活中、妊娠中、授乳中でワクチン接種を希望される患者さんには接種をお勧めしております。

(2021年8月16日、日本産婦人科医会第2報が更新されたため追記いたしました。)

厚生労働省ホームページより新型コロナワクチンQ&Aより


私は妊娠中・授乳中・妊娠を計画中ですが、ワクチンを接種することができますか。

 妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の方も、ワクチンを接種することができます。mRNAワクチンが妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすという報告はありません。
 妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の方でも、mRNAワクチンを接種することができます。
産婦人科の関係学会は、海外における多くの妊婦へのmRNAワクチンの接種実績から、ワクチンは、妊娠初期から妊婦と胎児の双方を守り、重篤な合併症が発生したとの報告は無いとしています。また、妊娠中のいつの時期でも接種可能としています。
 妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、特に妊娠後期は、重症化しやすいとされています。特に人口当たりの感染者が多い地域の方、感染リスクが高い医療従事者、糖尿病、高血圧など基礎疾患を合併している方は、ぜひ接種を検討ください。
 なお、米国では妊娠中・授乳中・妊娠を計画中の方について、下記のような見解やエビデンスが示されています。

妊娠中の方:

 米国では、既に10万人以上の妊婦が新型コロナワクチンを接種しています(2021年5月3日時点)。妊娠中にmRNAワクチン接種をした約3万5千人の女性の追跡研究の報告では、発熱や倦怠感などの副反応の頻度は非妊娠女性と同程度であり、胎児や出産への影響は認められませんでした。妊婦中の女性に対するmRNAワクチンの安全性や有効性に関するランダム化比較試験も現在行われています。
 米国CDCは、妊婦にも接種の機会が与えられるべきだとしております。これは、妊婦は同世代の妊娠していない女性と比べて、新型コロナウイルスに感染した場合に重症になりやすく、また早産や妊娠合併症、胎児への悪影響のリスクが上がることが主な理由です。
妊娠中にmRNAワクチンを受けた方の臍帯血(胎児の血液と同じ)や母乳を調べた研究では、臍帯血にも母乳中にも新型コロナウイルスに対する抗体があることが確認されています。こうした抗体が、産後の新生児を感染から守る効果があることが期待されています。


授乳中の方:

 授乳中の方も、新型コロナワクチンのmRNAワクチンを接種することができます。mRNAワクチンの成分そのものは乳腺の組織や母乳に出てこないと考えられております。
授乳中にmRNAワクチンを受けた方の母乳中に新型コロナウイルスに対する抗体が確認されています。こうした抗体が、授乳中の子供を感染から守る効果があることが期待されています。

妊娠を計画している方:

 これから妊娠を計画されている方もmRNAワクチンを接種できます。mRNAワクチンが生殖器に悪影響を及ぼす報告はなく、ワクチンのために妊娠のタイミングを変更する必要はありません。もし接種後に妊娠していたことがわかった場合も、ワクチン接種が妊娠に悪影響を及ぼすという報告はありません。

厚生労働省ホームページ

日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会・日本産婦人科感染症学会より(2021年6月17日)


―新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて(第2報)―

昨今、新型コロナウイルスが若年者を中心に急速に感染拡大し、多くの妊婦さんの感染も確認されていま す。一方で、新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンは、高齢者に限らず基礎疾患を持つ者、 それ以外の者へと順次拡大されております。

(1) アメリカ疾病対策センター(CDC)は妊婦さんへのワクチン接種を強く推奨する声明を出しています。 わが国においても、妊婦さんは時期を問わずワクチンを接種することをお勧めします。

(2) 妊婦が感染する場合の約8割は、夫やパートナーからの感染です。 そこで、妊婦の夫またはパートナーの方は、ワクチンを接種することをお願いします。 なお、このお知らせは、最新の知見に基づいて 6 月 17 日のお知らせを更新するものです。

1. 妊娠中、特に妊娠後期に新型コロナウイルスに感染すると、重症化しやすいとされています。

2. 全国的に感染地域が拡大し、感染の多い地域では感染拡大が過去にない拡大となっています。そのよう な地域にお住まいの方や、糖尿病、高血圧、気管支喘息などの基礎疾患を合併している方は、ぜひ接種 をご検討ください。

3. 副反応に関し、妊婦さんと一般の人に差はありませんが、発熱した場合には早めに解熱剤を服用するようにしてください。アセトアミノフェンは内服していただいて問題ありませんので頭痛がある場合も内 服してください。

4. 副反応の有無にかかわらず、妊娠の異常(流産、早産、その他)の頻度はワクチンを打たなかった妊婦と同じであると報告されています。

なお、接種を希望される場合は、以下の点にご留意ください。

・ 新型コロナワクチン接種の予診票には、「現在妊娠している可能性はありますか。または授乳中ですか。」 という質問がありますので、「はい」にチェックし、あらかじめ健診先の医師に接種の相談をしておき ましょう。接種してよいと言われていれば、その旨を接種会場の問診医に伝えて、接種を受けてください。

・ 妊娠中の方は、里帰り先の住民票と異なる居住地の産科医療施設で接種を受ける場合「住所地外接種届」 の提出は不要です(接種場所により届け出が必要になることもあるので、里帰り先の行政機関にお問い 合わせください)。

・ 予定された2 回のワクチンを接種しても、これまでと同様に感染予防策(適切なマスク使用、手洗い、人混みを避けるなど)は続けてください。

日本産婦人科医会

国立成育医療研究センター(National Center for Chile Health and Development)より抜粋

 妊娠中の安全性について

コミナティ筋注、COVID-19ワクチンモデルナ筋注の添付文書では、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種することと記載されています。
 動物試験では、母動物が接種することで動物の赤ちゃんに悪影響は見られませんでした。
米国におけるmRNAワクチンを接種した妊婦さんの登録調査では、副反応の頻度は妊娠していない女性と同程度でした。また、流産や死産、早産などの頻度は一般的な妊婦さんと比べて上昇しないことが報告されました。現在もさらなる調査が行われています。
妊婦さんが新型コロナウイルスに感染すると、感染していない妊婦さんと比べて重症化する割合や早産等が多いとの報告もあり、ワクチン接種のメリットがあると考えられています。 

授乳中の安全性について

 コミナティ筋注、COVID-19ワクチンモデルナ筋注の添付文書では、予防接種上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討することと記載されています。
このワクチンの性質からは、母乳移行量は非常に少なくなると考えられています。さらに多少のワクチン成分を含んだ母乳を赤ちゃんが飲んだとしても、赤ちゃんに悪影響が及ぶとは考えられません。
 実際にワクチン接種後の母乳移行について調べた研究では、母乳中にmRNAは検出されなかったと報告されています。また、多くの赤ちゃんで問題はみられなかったとの報告もあります。
これらのことから、授乳中のワクチン接種は問題ないと考えます。

 ※副反応での解熱鎮痛薬の使用について

 妊婦さんの場合、アセトアミノフェンは使用可能ですが、非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェン、ロキソプロフェン等)の妊娠後半期の使用は避けるべきと考えられています。
授乳婦さんの場合、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェン、ロキソプロフェン等)ともに安全に使用できると考えられます。

国立成育医療研究センター(National Center for Chile Health and Development)

CDC(米疾病対策センター) (2021年8月11日)


COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeedingより一部抜粋および日本語抜粋

What You Need to Know

COVID-19 vaccination is recommended for all people 12 years and older, including people who are pregnant, breastfeeding, trying to get pregnant now, or might become pregnant in the future.
Evidence about the safety and effectiveness of COVID-19 vaccination during pregnancy has been growing.

These data suggest that the benefits of receiving a COVID-19 vaccine outweigh any known or potential risks of vaccination during pregnancy.
There is currently no evidence that any vaccines, including COVID-19 vaccines, cause fertility problems in women or men.

 アメリカのCDCは、ファイザーまたはモデルナのワクチンを接種した妊娠20週より前の女性2456人分のデータを分析した結果を発表しました。
 接種を受けた妊婦のうち、流産が起きた割合はおよそ13%で。接種を受けていない場合でも通常11%から16%の割合で流産は起こるため、接種による影響は確認されなかったとしています。
 このためCDCは、妊娠中にワクチン接種を受けるメリットは、既知ないし潜在的なリスクを大きく上回るため、妊娠中および妊娠を希望する女性、また、授乳中の女性にもワクチン接種を受けるよう推奨するとしました。
 女性でも男性でも、ワクチン接種が妊娠に影響をおよぼすという科学的証拠はないとしています。

CDC(米疾病対策センター)

その他参考文献

Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons
N Engl J Med. 2021 Jun 17;384(24):2273-2282.

Tom T. Shimabukuro, M.D., et al.

Abstract

BACKGROUND
Many pregnant persons in the United States are receiving messenger RNA (mRNA) coronavirus disease 2019 (Covid-19) vaccines, but data are limited on their safety in pregnancy.

METHODS
From December 14, 2020, to February 28, 2021, we used data from the “v-safe after vaccination health checker” surveillance system, the v-safe pregnancy registry, and the Vaccine Adverse Event Reporting System (VAERS) to characterize the initial safety of mRNA Covid-19 vaccines in pregnant persons.

RESULTS
A total of 35,691 v-safe participants 16 to 54 years of age identified as pregnant. Injection-site pain was reported more frequently among pregnant persons than among nonpregnant women, whereas headache, myalgia, chills, and fever were reported less frequently.
Among 3958 participants enrolled in the v-safe pregnancy registry, 827 had a completed pregnancy, of which 115 (13.9%) resulted in a pregnancy loss and 712 (86.1%) resulted in a live birth (mostly among participants
with vaccination in the third trimester).
Adverse neonatal outcomes included preterm birth (in 9.4%) and small size for gestational age (in 3.2%); no neonatal deaths were reported. Although not directly comparable, calculated proportions of adverse pregnancy and neonatal outcomes in persons vaccinated against Covid-19 who had a completed pregnancy were similar to incidences reported in studies involving pregnant women that were conducted before the Covid-19 pandemic.
Among 221 pregnancy-related adverse events reported to the VAERS, the most frequently reported event was spontaneous abortion (46 cases).

CONCLUSIONS
Preliminary findings did not show obvious safety signals among pregnant persons who received mRNA Covid-19 vaccines.
However, more longitudinal follow-up, including follow-up of large numbers of women vaccinated earlier in pregnancy, is necessary to inform maternal, pregnancy, and infant outcomes.

Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons
N Engl J Med. 2021 Jun 17;384(24):2273-2282.
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